日常生活の前衛 ── 天使として生きる【3】 |
廣瀬純+佐々木祐 |
── 「市民社会の外から撃つのではなくて、市民社会のなかから撃つ」 |
佐々木 | : |
たしかに、アルゼンチンに関していえば、女性や失業者や貧民が、中産階級と結びついて、2001年12月の民衆蜂起につながった。しかし、時間が経つに連れ、それをまとめておくものがなく、ばらばらになってしまった。 そのことはやはりアルゼンチンの経験として、私たち自身もきちんと総括して、教訓化しておかなければならない★1。 |
廣 瀬 | : |
ピケテロス★2たちの運動が、弱体化しているというのは本当です。 |
佐々木 | : |
サパティスタとピケテロスの違いについては、どうお考えでしょうか。 |
廣 瀬 | : |
サパティスタとピケテロスとのあいだには、共鳴しているもののほうがずっと多くあると思うけど、それでも違いを挙げるとすれば、そのひとつは、やはりピケテロスが「市民社会」をうまい具合に味方につけられなかったことにあるのではないでしょうか。 |
佐々木 | : |
「市民社会のみなさん!」と。これは、もはや従来の意味とは違い、サパティスタ独自の意味、位置づけを獲得した言葉となりつつあります。 |
廣 瀬 | : |
サパティスタにとっての「市民社会」とは、メキシコ国民とか、メキシコの他の地域に住んでいる人たち、あるいは、世界の他の人たちのことですよね。サパティスタたちは、つねにそうした人たちのことを気にしている。 |
佐々木 | : |
しかも、「市民社会」を撃ってはいけないということですね。 |
廣 瀬 | : |
YouTubeにECD★9の「言うこと聞くよなやつらじゃないぞ」という曲を使ってつくった変な映像があって★10、それを見て僕が面白いなと思ったのは、自分たちの運動を、米騒動などと重ね合わせているというところです。こうしたことは、やって損はないと思います。 |
廣 瀬 | : |
僕は大学で働いていますが、感性のある学生が、まず何を初めに読んでいたかというと、小林よしのり★12なんです。「君たちのおじいさんは、アジアを解放するために、命を捨てて戦ったんだ」と言われて、「僕にもその血が流れているのか」と、誇りを感じてしまうわけ。 |
佐々木 | : |
闘いのなかに、いかに日本の市民社会を巻き込んでいくかということですね。 |
廣 瀬 | : |
だいたい、「日本人は和を尊ぶ民族だ」なんて嘘っぱちもいいところでしょう。いま出ている日本史の教科書を読んだって、日本人が和を尊んでいる様子など、ひとつも描かれていません(笑)。中学や高校の先生は、授業でそこを強調すべきです。 |